ジョエル・クァリントンの FIFTHS: INTERVALS CHORDS ARPEGGIOS SCALES が出たので、ちょいちょいと確認しながら五度調弦でのフィンガリングの考え方を探っています。
ぱっととさらってみた感じ、指の選択にあんまり統一性がないようにも感じるのですが、確かに書いてある指のほうが楽かつ確実に取れるような気もしており、術理を少し考えてみたい気はします。
さて、それにしても、このフィンガリングパターンで驚くのは、ポジションの考え方がシマンドルのシステムとは全く違っていること。一応、ラバトのシステムに近いといえば近いのですが、それとも結構違うという印象です。むしろヴァイオリンのシステムに近いというのか。
クァリントンのシステムで一つの「ポジション」を決めるのは親指の位置。ただし、一つの親指の位置に対して、他の四指の動きは流動的です。
というのは、指の間隔を半音にはしていないからです。
左手はむしろ基本的には「閉じた」リラックスした状態にあって、必要に応じてエクスエンションとピヴォットが組み合わされて音を取るシステム。
エクステンションというのも、無理やりのエクステンションではなくて、指の伸縮の方向を使ったエクステンションという感じです。そもそも、指は、指板の平面に対して、45度の角度で置くのが基本形になっている(てのひらが駒の方向に向かいます)。この状態で指を伸ばすと、自然とエクステンションになっていく感じです。
そんなわけで、短3度は同じ弦の上でピヴォット(親指はネックから動かない)で取ることになり、長三度は同じ弦だとすれば、肘から先のローテーション(親指もネックから動く)で取るような形になります。
クァリントンのシステム、シマンドルのシステムで慣れてる見方からすると、音程外すリスクがめちゃめちゃ高いように思えるんですよね。音程の間隔と指の幅の間隔が一致しないので、ポジション感覚からすると非合理な気もします。ただ、指を無理やり広げることはしない、というか基本閉じた状態で常に動けるようにしているわけなので、運動生理学的には合理的な気がする、というような、しないようなです。
いずれにしても、シマンドルで考えるポジションとはだいぶ概念が違う。
ただ、考えてみると、ヴァイオリンなんかは同じ「ポジション」であっても、ディアトニックに指を配置する都合上、指の配置のパターンが数パターンあるわけで、その感覚に近いのか、というような気がします。果たしてクァリントンのこのフィンガリングシステムが有効なのかどうか、時間をかけて検証してみたいと思います。