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アンサンブルの中でのゲーリー・カー

ゲーリー・カーがアンサンブルの中で弾いているというのも珍しいのですが、
それよりも、彼の音が弦楽の中でどう溶けるのかという方が興味深いです。




よく指摘されるのは、ゲーリーの音は「オケ向きじゃない」ということ。
確かに、いわゆる「ベースらしい」音ではないし、オケでしばしば求められる重厚感や空気感とは違う。
しかし、こういう演奏を聞いてみると、そういう「ベースらしさ」とはまた違うベースとしての役割もあるんじゃないか、と思わせられます。

というのも、やはり同じような編成の曲で第二チェロをコントラバスで弾くという演奏をいくつか聞いたことがあるのですが、その場合、「オケのベース」っぽいテクニックで弾いてしまうと、逆に異質さが際立って聞こえてしまうケースがあったのです。
むしろ「オケのベース」とはだいぶ違ったゲーリーのテクニックだからこそハマっていくアンサンブルもあるのだなあと。
その辺、ゲーリーのテクニックで五度調弦を使う、ダニエル・ニックスの今後の展開にも期待したいところ。

# by tajimanomegane | 2021-05-07 02:00 | コントラバス・ガンバ | Comments(0)

五度調弦の例

最近驚いたのですが、シカゴ響のアレックス・ハンナが五度調弦で演奏していました。



エクステンションついてはいますが、ちょっと特殊な加工をして、4番線(C線)は普通の長さの弦を張っています。

この前後のストリーミング(CSO Sessions, Episode 15)で、ベートーヴェンのセプテットとモンゴメリーの現代曲も五度調弦でやってます。






アンサンブルの中での五度調弦の可能性を感じるのは、存在感を出しながら他の声部をマスキングしないというところや、もっとオーガニックなピチカートの音がでるというところ。
デメリットとして感じるのは、四度調弦で強調される子音と重量感がなくなるので、低音を表に出すようなアプローチには弱いのではないかというところですね。

技術的なところでは、五度調弦でこれだけ弾けるっていう例が示されてしまったので、平均的なレヴェルは今後どんどん向上していく一方だと思います・・・。




# by tajimanomegane | 2021-03-23 04:55 | コントラバス・ガンバ | Comments(0)

バッハとコントラバスの微妙な関係

J.S.バッハの無伴奏作品とコントラバスとの食い合わせの悪さというのがあります。

無伴奏ヴァイオリンのほうも無伴奏チェロのほうも、基本的には五度調弦を想定しているものなので、四度調弦のコントラバスでは単純にフィンガリングが難しくなるという以上に、響きが不自然になってしまうという問題はあります。

さらに、調性の問題もあります。
もし、調を変えずに弾こうとすると、結局チェロと同じ音域になるわけですが、チェロが弦長70cmくらいで深く歌えるところを、コントラバスだと本来の弦長の半分、つまり親指ポジションを多用した50cmくらいの弦長で弾くことになるので、かえって音が浅はかになってしまう。
かといって、移調してしまうのも問題です。
バッハの場合、各調が明らかに意味を持って設定されているので、響きを良くする意味であっても、これを移調するのはなんとも気が引けてしまう。

それに加えて、どうも楽器の性格ごとに想定している役割がそもそも違うようにも感じるんですよね。
五度の楽器を使うときには、五度という、柔軟に転調に対応できるような無色な背景を貴重とした、どっちかっていうと彼岸の音楽を考えているようなのに対して、
ガンバなどの四度(と三度の混合調弦)の場合には、特定の調号との結びつきが強くなるためか、すでに色があるというか、俗世的な音楽とか地上の出来事を描写するために使っているような気がするんです。

ガンバソナタはかなり世俗的というか地上的な性格ですが、これに対してチェロ組曲になると宗教的というか天上的な性格が強くなってくる。

オペラに軸足のあるボッテジーニや、聖と俗が表裏一体にあるシューベルトなんかだと四度の楽器の地上的な性格の意味があると感じますが、そういった世界から離れてしまった音楽にはちょっと違うんじゃないか、という。

一つの要素を変えてしまうと、もうその時点で全体が成立しなくなってしまうという意味では、楽曲の完成度が高すぎるのも問題なのかもしれません。

# by tajimanomegane | 2021-02-10 18:34 | コントラバス・ガンバ | Comments(0)

五度調弦の場合の「ポジション」?

ジョエル・クァリントンの FIFTHS: INTERVALS CHORDS ARPEGGIOS SCALES が出たので、ちょいちょいと確認しながら五度調弦でのフィンガリングの考え方を探っています。
ぱっととさらってみた感じ、指の選択にあんまり統一性がないようにも感じるのですが、確かに書いてある指のほうが楽かつ確実に取れるような気もしており、術理を少し考えてみたい気はします。

さて、それにしても、このフィンガリングパターンで驚くのは、ポジションの考え方がシマンドルのシステムとは全く違っていること。一応、ラバトのシステムに近いといえば近いのですが、それとも結構違うという印象です。むしろヴァイオリンのシステムに近いというのか。


クァリントンのシステムで一つの「ポジション」を決めるのは親指の位置。ただし、一つの親指の位置に対して、他の四指の動きは流動的です。
というのは、指の間隔を半音にはしていないからです。
左手はむしろ基本的には「閉じた」リラックスした状態にあって、必要に応じてエクスエンションとピヴォットが組み合わされて音を取るシステム。
エクステンションというのも、無理やりのエクステンションではなくて、指の伸縮の方向を使ったエクステンションという感じです。そもそも、指は、指板の平面に対して、45度の角度で置くのが基本形になっている(てのひらが駒の方向に向かいます)。この状態で指を伸ばすと、自然とエクステンションになっていく感じです。

そんなわけで、短3度は同じ弦の上でピヴォット(親指はネックから動かない)で取ることになり、長三度は同じ弦だとすれば、肘から先のローテーション(親指もネックから動く)で取るような形になります。

クァリントンのシステム、シマンドルのシステムで慣れてる見方からすると、音程外すリスクがめちゃめちゃ高いように思えるんですよね。音程の間隔と指の幅の間隔が一致しないので、ポジション感覚からすると非合理な気もします。ただ、指を無理やり広げることはしない、というか基本閉じた状態で常に動けるようにしているわけなので、運動生理学的には合理的な気がする、というような、しないようなです。
いずれにしても、シマンドルで考えるポジションとはだいぶ概念が違う。

ただ、考えてみると、ヴァイオリンなんかは同じ「ポジション」であっても、ディアトニックに指を配置する都合上、指の配置のパターンが数パターンあるわけで、その感覚に近いのか、というような気がします。果たしてクァリントンのこのフィンガリングシステムが有効なのかどうか、時間をかけて検証してみたいと思います。

# by tajimanomegane | 2020-12-23 00:26 | コントラバス・ガンバ | Comments(0)

ポジションマークの書き方

あったほうがいい、ないほうがいい論争のあるポジションマークですが、僕はあった方が良い派です。

もちろん、ポジションマークでは音程の大まかなところまでしか作れないので、最終的な微調整は耳を使う必要があります。
ヴァイオリンくらいの大きさだと、音程のツボが指の幅よりもはるかに小さいので、ポジションマークをつけてしまうことで逆に音程が取れなくなる気がしていますが、コントラバスくらいの大きさだと、そのあたりの感覚がだいぶ違うと感じています。

さて、しかし、ポジションマークを埋め込むことには反対です。
ポジションマークの埋め込まれた楽器をいくつか弾いてみた結果ですが、高音域にいくほど音程の幅が繊細になり、セッティングの多少のズレによってポジションマークと実際の音のズレがひどくなり、実用にならないケースが生じるからです。
誤って駒が動いてしまったり、季節の変化による楽器の収縮、弦高の上下、こういったことで厳密な音のツボが動いてしまうんですよね。

そこで、個人的には、ポジションマークは、面倒だけれどもその都度書き直す方がいいと思っています。
今回は、その書き直し方を簡単にする方法です。


まず、ポジションマークをつける位置ですが、基本的にはハーモニクスのある場所と合わせます。
すなわち、弦長の1/4、1/3、1/2、4/6、2/3、3/4の位置につけると、それほど見づらくなく、かつ使いやすいところにつけられます。
G線だと、それぞれ、ド、レ、ソ、シ、レ、ソの音になる部分ですね。
(ちなみにハーフポジション近辺は、ポジションマークつけちゃうと逆に音程悪くなる気がするので、僕は付けていません。なんやかやで、ハーフポジションが一番難しいのではないでしょうか)


さて、それではそれぞれのハーモニクスに対してどうやってポジションマークをつけるか、ということですが、
まずはピンセットとシリコンチューブを用意します。
(ピンセット買うと、だいたいシリコンチューブで先端が留まっているはずなので、それを使います)

ポジションマークの書き方_f0221876_23350476.jpeg

この先端部分を弦と直角にして、ハーモニクスの位置に合わせます。

ポジションマークの書き方_f0221876_23351760.jpeg

この場合にはもうすでに鉛筆で線が引かれてますが、大体の位置に持っていきます。

ポジションマークの書き方_f0221876_23353851.jpeg
次に、ピチカートでハーモニクスをポンポンと弾きながら、ピンセットで弦を押していきます。
指板につけると実音になってくるので、ハーモニクスと実音のオクターヴがきっちり極まるポイントに、鉛筆で線を引きます。

こうすると、チューナーなどの道具なしで、実用的な位置にポジションマークをつけられます。

チューナーを使うと、モード調整しない限りは、平均律で出てしまうはずですが、それだと、弦楽器の音程のシステムとは微妙にズレたものになってしまう気がします。
弦楽器は、基本はピタゴラス的に音程の位置を掴んでおいて、場合に応じて純正律や平均律に寄せるというシステムの方が音程と響きの関係を理解しやすいような気がします。
チューナーを使わないもう一つの方法は、物理的に定規で弦長の1/2や1/3を測っていく方法ですが、これは定規を当てるときに結構誤差が出やすくなりますし、なにより作業工程が大変多くなります。
ハーモニクスの音を耳で確認しながら弦長の1/2や1/3を測った方が、結局誤差が少なくなる気がします。

# by tajimanomegane | 2020-11-23 00:31 | コントラバス・ガンバ | Comments(0)


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