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まったく知らずにいてしまったのだが、四月の一週間ほど、青木十良さんの映画が上映されていたという。手痛い。
手遅れながら、映画に行った方の感想を見てみると、やはり行くべきであったと悔やまれる。

映画のなかでかたられていたこと、というのが、また興味深いのだ。

「音楽は背中で演奏する」
「空中に飛翔している時の感覚で演奏する」
「こうね、毛をほんのちょっと使って、カリカリ、って音と一緒に弾く音が良いんですよ。わかるかなあ」

ボウイングは、羽ばたくように動かすと都合がよい。
子音を丁寧に作ると、楽器が鳴ってくる。

ほんと、見てみたかった。ううん。

なにより、映画のタイトルがすばらしい。
自尊、と日本語だけで書くとどうも鼻につくが、これがeleganceに充てられている。
エレガンスは、少なくとも僕には、とてもたいせつな要素だ。
それは、「いき」に近いのかもしれない。
感情の直截的な表出は、決して「いき」ではない。
どこかしら上品なものに包まれて、しかし、どこかソバージュなものをつよく残しているような、そんなエクスプレッションが「いき」であり、エレガントなのだ。

かつてのヤッシャ・ハイフェッツが弟子につねに求めたものもエレガンスだったという。
エレガンスは鼻につく貴族趣味ではない。むしろ、理性と感性に挟みこまれた人間存在が、強くあろうとするときに生まれるものであるはずだ。
# by tajimanomegane | 2012-05-14 02:05 | 音楽 | Trackback | Comments(0)
赤いシマンドルを買った人ならどっかで見た、フレッド・ジッマーマンの演奏。

http://doublebassblog.org/2010/07/cbc-155-frederick-zimmermann-practice-tapes.html


1950, 60年代らしいので、たぶんプレーンガットである。
どうやったらこんな音が出るのか・・・・。謎である。
ケブラーのクリープ率が気になって調べてみたらこんなのをみつけた。


http://linearcomposites.net/media/news_story_04.pdf


とりあえず、30年くらいは使えるようである。
が、所詮は化学繊維、クリープしきったらそこで切れるので、一生は使えなさそうである。
何年かに一度は交換したほうが良さそうである。

金属のテールガットも同様である。
潜在的に金属疲労が蓄積するので、あるときいきなりぷつっといくことがある。
やはり一生は使えなさそうである。

その点、プレーンガットであれば、条件さえ整えばずっと使えるので、下手したら一生使える。
実際、楽器博物館などで、何百年前のテールガットが残ってることがある。
ガットは伸びきるということがないのだ。湿気を吸ったり、緩めたりすると縮む。
これはガットの弱点のように言われているけれども、むしろ強みである。
緩めたら回復するってことなんだから。

ただ、条件が整わなかったり、きちんと手入れをしなかったりすると、真っ先に切れるのもガットだろうなあ・・・・。
思いつきなのだが、試しに、テールガットをプレーンガットから、ケブラーに戻してみた。

昔、Velvetから出してるテールコードは試したことがあった。
ヴェルヴェットのはたぶん、ケブラーである。(注1)
が、これが伸びるのだ。
最初決めた位置から、どんどん伸びて、テールピースはかなり上の位置になってしまった。
テールピースの位置は、かなりクリティカルな要素なので、これが動いてしまうのは使い物にならない、ということで使わなくなった。

その後、テールガットをプレーンガットにしたのだが、これが、何故か伸びない。
音響的にも、音量的にも、音色的にも最高、という感は変わらない。

で、まあ、思いつきで、またケブラーを試してみた。どんな音だったっけ?っていうが気になって仕方なかったのである。

ただし、今回は前回と違う。前回、ヴェルヴェットのテールコードは直径2.5mmだった。
細かったから伸びたんじゃないの?という思いつき、今回は直径4mmにしてみた。
直径4mmのケブラーだと、破断強度は600kgを超える。
五弦コントラバスの弦の合計テンションが150kgくらいだから、ややオーヴァースペックである。

思いつきは成功。4mmだと伸びない。せいぜい結び目が締まる程度。これなら、使える。
ただ、問題はクリープ率(下記)で、これは今後様子を見ないと分からない。

音色も、まあ、なかなかである。プレーンガットとは違うけど。
ガットに比べると、(テールピースの位置の問題もあるのだが)軽く、フォーカスが効いたような音になる気がする。音量的には変わらないかな。



さて、今回、変えるにあたって、素材をちょっと迷った。
特殊繊維素材で、テールガットに使えそうなものは、上のケブラーの他に、ダイニーマやベクトラン、ザイロンなど、同じようなスペックのものが幾つかある。
そのなかで既に商品化されてて、手に入れやすかったのは、ケブラーとダイニーマ。
問題は、振動吸収性と、クリープ率である。

人工繊維というやつは、弱い荷重でも、何日と引っ張っていくとだんだん伸びてしまう。これをクリープというらしいのだが、ダイニーマはこれに弱い。
長い時間引っ張っていると、最初伸びなくても、あとで伸びてしまう。テールガットにするなら、これは使えん。

その点、ケブラーのほうがクリープ率が低いようである。ベクトランだともっと良さそう。
ケブラーとベクトランは、しかし、振動吸収性も高い。
それって音響的にどうなんだろう?と思ったところなのだが、実際ケブラーを張って見ると、悪いようには働いていない。
いつまでも振動が残らないぶん、逆にノイズが減って、立ち上がりが良くなるようである。

となると、クリープ率がもっと低くて強度のあるベクトランも気になるのだが、ちょっと買いづらい。
今後に期待ですかな。

僕がテールガットに求めるものは、振動をエンドブロックにつたえることであるから、余計な柔軟さはむしろ要らない。それよりも、しっかりとエンドブロックをホールドしてほしい。
これが、硬すぎるとホールドせずに弾いてしまうし、重い素材だと、テールガットに振動が残ってしまうから、キレが悪い。
というわけで、僕的には、テールガットは、重すぎない素材で、かつ、なるべく太くてしっかりしたのの方が好きだ。


追記
注1 手持ちのヴェルヴェットのテールコードを炙ってみたら溶けた。ので、これはケブラーではないもよう。ケブラーなら溶けるまえに燃えます。
去年立ち上がったばかりという、あたらしいメーカーの弦を発注してみた。



Pure Cordeってイタリア語になってない気がするし、Darmsaitenってドイツ語だし・・・、そうか、インターナショナルなのかな。そうだそうだ。

ドイツで売ってる、製造元モロッコという弦です。
見た目は、たいへんに生々しい。スモークしたサラミみたい。いやまあ、同じものですが。

で、弦がたいへんにやわらかい。
ハイツイストでお願いしましたが、僕が今までにさわったメーカーの中では一番やわらかい。

色合い的には、牛ではなくて羊系なんでしょう。が、北アフリカの謎の家畜という気がします。
この色、昔の絵画に描かれた弦楽器の弦の色に似ています。それもポイント高い。

買ったのは二本だけ、コントラバスのGとDで、ゲージは2.15と2.70にしました。
ピラストロのコルダの、カルロス・エンリケス・エディションと同じ。
カルロス・エンリケス・エディションの出所は、元ニューヨークフィルハーモニックのジョン・A・シェーファーだそうなので、それもいいかなと。
カルロス・エンリケス・エディションは試したことがないけど、G,A,Eをだいたいイコールテンションでとって、Dのゲージだけ下げるシステムっぽいですね。
チェロの話で、真ん中の二本の弦、どちらかのテンションを落とすと、全体の音の飛びが良くなるという話があるので、ちょっと期待。

必要ないと思うけど、とりあえず、何日かオリーヴオイルに漬けてみて、のんびり試しましょう。