tajimanomegane



弦が動かす弓

昨日、あるレッスンを見させていただいて、ああ、なるほど、と納得したこと。


最適な弓の速さは、弦の振動数が決定する部分がある。


どういうことかというと、ヘルムホルツ振動によるStick&Slipの周期によって、弓自体が動かされる、ということです。
(http://tajimegane.exblog.jp/27585721/)
このイメージを使えば、
「弓→弦」
という動きだけでなく、
「弦→弓」
という動きも可能です。

二つほど、実験してみましょう。

実験1
・弓を二本用意する。
・1本の弓は重心あたりで紐で結び、水平に垂らせるようにする。
・楽器を仰向けに寝かせて、紐で水平に垂らした弓を弦の上に乗せる。
・弓を乗せた弦を、もう一本の弓でこする。
・垂らした弓を置く場所を変えて実験してみる。

これで、垂らした弓が「一方向どちらか」に動くことがはっきりするので、ヘルムホルツ振動によって、弓が動かされることがわかります。


実験2
今度は楽器を構えて、
・左手でピチカートをします(場所は、オクターヴよりも駒より、低音弦の方がわかりやすいです)。
・その直後、素早く、静かに弓を弦の上に乗せてみてください。

これをしてみると、ダウン方向にピチカートをしたときにはダウン方向に、アップ方向にピチカートをしたときにはアップ方向に、
ほんの少し弓が引っ張られるのがわかるはずです。
(オクターヴよりもネック寄りをピチカートした時には逆方向になります。ヘルムホルツ運動で考えてもらえれば。)

さて、この弓を引っ張る弦の動きは、ヘルムホルツ運動の振幅や振動数によって決まってきます

で、弦の持っている振動数に合わせた弓の速度を設定できれば、
言い換えれば、アタックの瞬間から、弦の持っている振動数に適した速度で弓を動かせれば、圧力がなくても、弓毛と弦のコンタクトはもっとも緻密に取ることができ、弓毛と弦の緻密なコンタクトは充実した音に繋がっていくはずなんです。


弓の速度が振動数によって決まってくるっていうのは、クヌート・ギュットラーが言っている、次の図式とも一致します。

Bow Pressure,
Bow Distance from Bridge, = Acceleration
Frequency,

弓圧
駒からの弓の距離   = 加速
振動数



で、こうしてみると、弓の動かし方でよく言われる、
"Follow the Bow!"
っていうのも、実はイメージじゃなくて、弓が弦に従って動いていくのに気づけ、ということもあるかもしれないですね。

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# by tajimanomegane | 2017-07-28 13:39 | コントラバス・ガンバ | Trackback | Comments(0)

最近のベルリンフィルのガット弦使用率

カラヤン時代のベルリンフィルといえば、ピラストロのスチール弦、しかも同一のもので統一されていたものですが、ここ最近はガットの使用率が上がっている上に、それで定着しつつあるようにも見えます。

例えば、最近のヴァルトビューネの写真から。

f0221876_13232357.jpg
Photos: Monika Rittershaus
http://68.media.tumblr.com/3506a0152abbe51b91fea8b58fb21de2/tumblr_osiq15ZAMk1qats4wo1_1280.jpg

左の楽器が首席のザクサラ、右の楽器がベテランのヴォルフのものですが、
ザクサラの楽器は2-5番線がピラストロのオイドクサ、1番線がオブリガート、ヴォルフの楽器は3-5番線がオイドクサ、1、2番線がとマスティークのベルカント、っていうのが見て取れます。
(テールピース側の飾り糸だけみるとオリジナルフラットクロームのようにも見えますが、ペグ側の飾り糸や、飾りの色〔オイドクサの方が青が深いです〕などをみると、オイドクサなんですよね)


それから、ヨーロッパコンサートでも。
f0221876_13292791.jpg
Photos: Monika Rittershaus
http://68.media.tumblr.com/78ec7fb5a80d1baebab02518918cf696/tumblr_opblg2Azxo1qats4wo2_1280.jpg
ハインツェがプレーンガット(Nicholas Baldock氏のKathedraleですね)使っています。

他にも、僕が見えた限りでは、首席のマクドナルドがやはりヴォルフと同じ弦の組み合わせを使い、ライネもオイドクサ率が高いです(ライネはときどき変わります)。

そして、それ以外となると、ヤヌーシュ・ヴィゼクがオリジナルフラットクローム率が高いくらいで、他はみんなベルカント。


そして、面白いことに、どういうわけだか、シンセティク弦はあまり定着しないのです。
オイドクサを使っている奏者はオイドクサを使い続けているし、ベルカントを使っている奏者は別のスチール弦に変わることがあっても、スチールのまま。
エヴァ・ピラッツィを張っていた奏者もいましたが、最近はベルカントに戻っていたりするのです。

なんとなく、その理由はわからないでもなくて。
エヴァは、重さをかけていくと、音に異様な硬さが出ちゃうのと、弦の伸び率が高いせいで、発音時に少し伸びてしまい、若干の発音の遅れと、子音の立ち方が少し湿った感じになってしまうことがあります(とくに柔らかい松脂を使っているときには)。
その点、オイドクサもベルカントも、発音時にはカリッとした音が出るし、重さを掛けても(やりすぎれば音が潰れるにせよ)、異様な硬さは出ないんですよね。

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# by tajimanomegane | 2017-07-26 13:54 | コントラバス・ガンバ | Trackback | Comments(0)

A Guide to Advanced Modern Double Bass Technique

なぜか気づかずにいたんですが、クヌート・ギュットラーの
http://www.knutsacoustics.com/Guide.html
がネット上で見られるようになっていました。

クヌート・ギュットラーは、いち早くヘルムホルツ振動を奏法に取り入れた奏者の一人で、この教本にもヘルムホルツ振動への言及と実験が載っています。

物理学と生理学を組み合わせた音楽の全体像を提示したのは、ヘルマン・フォン・ヘルムホルツそのひとが初めですが、ギュットラーも物理学と生理学を組み合わせたアプローチをしている珍しい奏者です。

もっとも、ヘルムホルツやギュットラーには、ソマティックな部分が少し欠けているとは思います。
筋肉運動をさせるのであれば、解剖学に基づいたボディマッピングを理解した方が運動の精度が上がりますし、身体的な運動にはメンタルな要素が絡んできて、メンタルな要素が運動を阻害することもしばしばありますが、彼らの時代にはまだそこまでのテーマにはなっていないので、そういったことへの言及がまだ足りてはいません。
だから、もし彼らの仕事を受け継いでいくとすれば、解剖学や心理学的なアプローチを付け加える余地はあります。

とはいえ、この本、長い間読みたいと思っていたものの、絶版になっていたものなので、手に入って嬉しいです。

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# by tajimanomegane | 2017-07-25 02:32 | コントラバス・ガンバ | Trackback | Comments(0)

弦の硬さと発音の速さ・重さ

コントラバスにとって、とくに重視される要素が発音。

発音って、思うにいくつかのレベルがあります。

1. 奏者が弓を動かし始める時点。
2. 弓が弦を駆動し始める時点。(Stickする時点)
3. 駆動された弦が弓を離れる時点。(Slipする時点)
4. 弦の振動が楽器に伝わる時点。

一口に発音といっても、これだけのレベルの差がある。自分がどのレベルで発音が遅いのかを知らなければ、対応しようがないです。

1.2. については、「発音しようと考えていた発音の時点」と「本当に楽器から音が出始めた時点」がどれくらいずれているのかを観察してみよう、ということが第一。
たとえば、メトロノームを使って、それに合わせて発音させてみて、メトロノームの音が聞こえたら、発音が遅れています。
音が完璧に重なって、メトロノームのクリック音が聞こえなくなったら、発音のタイミングがバッチリだということになるんじゃないかと思います。

個人的には、発音の時点は3だと思いますが、3でも、Stick&Slipの周期の形成が曖昧になっていたり、楽器の調整によっては、3と4の間にタイムラグが生じたりします。

他には、タイムラグはないんだけれど、3での発音したときのアタックが足りず、音量が足りないように感じてしまって、その後さらに押し込んだり弓を早くしたりすると「後ふくらみ」になって、発音が遅く聞こえます。
こういう場合は、どんなに汚い音が出てもいいからめちゃめちゃ強くアタックの「瞬間」だけを考えるとか、
アタックの前からアタックの間、アタックの後に、自分が何をしているか、観察すると良いです。
観察というか、動画に撮って見てみると、ショックは大きいですが、得るものも大きいです。


さて、まあ、で、今日の話は、1.2についてなんです。
っていうのは、発音をミスったりするときにも、よくある勘違いのけっこうな部分が、1.2にあると思うので。


さて、まず、ちょっと質問です。
弦は硬い方が発音しやすいですか?
それとも、柔らかい方が発音しやすいですか?




これ、ちょっとトリッキーな質問だと思うんです。
発音のしやすさって、「発音に必要な摩擦力」と「発音までの時間」の二つの要素があるんですが、
しばしば、我々奏者は「発音が重い」「発音が軽い」と言って、両者を混同します。
しかし、厳密には、「必要な摩擦力」と「必要な時間」ってむしろ背反的だと思うんです。

ちょっとこの図を見てみて下さい。

f0221876_01570477.jpg
これは、摩擦力が等しい場合に、「柔らかい」弦と「硬い」弦の発音直前の移動距離をイメージしたものです。
で、これでみると明らかなんですが、
「1. 奏者が弓を動かし始める時点」から、「3. 駆動された弦が弓を離れる時点(Slipする時点)」までの時間が短いのは
「硬い」弦
なんですよ。

でも、大体の方はここで「おかしいな?」と思うはず。
直感的には、経験的には、「柔らかい弦」の方が発音しやすいと思われてるんじゃないでしょうか。

ここにもトリックがあります。

結構な割合で、奏者は、発音する前に必要なだけの弦の移動距離を「多め」に見積もってます。

この図を見てみてください。
f0221876_02122720.jpg
この図は、「発音する直前に必要だと思っている距離」が柔らかい弦と同じだけ必要だと思っている奏者が、発音前にどれだけ硬い弦を移動させようとするか、という観点から描いてみました。
すると、「硬い」弦が発音するのに必要な距離を超えて、赤い矢印の分だけ、力が必要になるんですね。

そして、この力を「重さ」と感じるわけです。

で、この「重さ」というか「摩擦力」を稼ぐために、松ヤニを多めに塗ったり、弓の圧力をかけたりすることになるわけです。

でも、ほんとなら、ただ発音するだけなら、こんなに距離は必要ないはずで、もっと短い距離で、弦は発音し始めるはずです。
にもかかわらず、なぜ、我々は、この距離を稼ごうとしたがるのでしょう?

たぶん、その答えは「アタック・音量が欲しいから」なんだと思います。

確かに、上図のAB間の距離が大きければ大きいほど、アタックは強くなりますし、音量も一応大きくなります。
そういう音が必要な状況も多いと思います。

ただ、そこで覚えておきたいのが、アタックの強さや音量って、それだけで決まっているわけではない、ということですね。

アタックが曖昧になっているケースでは、僕が見聞きしている限りでは、

1. 奏者が弓を動かし始める時点。
2. 弓が弦を駆動し始める時点。(Stickする時点)
3. 駆動された弦が弓を離れる時点。(Slipする時点)

この3点が曖昧になっているケースがかなりあります。
上図のAB間の距離がどれほど小さくても、2と3の時間的な切り替わりがはっきりしていればアタックとしては成立します。
逆に、いつまでたっても2の状態が続けば発音は遅れますし、弦を必要なだけ引っ張る2の作業中に、3が生じ始めてしまえば、やはりアタックは不明確になります。
つまり、時間的な出来事の切り替わりによるアタック、というのもあります。

さらに、音量に関しても、ピチカートなら、最初に与えたエネルギーで全てが決まってきますが、弓で弾く場合、もう少し事態が複雑化しますし、倍音列の出方によって音圧も変化してきます(単純に、倍音が増えれば、音圧が上がります)。

なので、今日の一応の結論としては、

音量やアタックへの欲求を手放してみると、発音はもっとラクになる可能性がある。

もっとラクに発音したときに、「ミスった」ように感じた発音について、どういう状態を自分は「ミスった」ことにしているのかを分析して言葉にしてみると、また別のものが見えてくる可能性がある。

って感じですかね。

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# by tajimanomegane | 2017-07-24 02:55 | コントラバス・ガンバ | Trackback | Comments(0)

成長の証

知らない間に成長してたんだなあ、という話。


ある演奏会の本番で、諸事情あって、僕の楽器を貸したんです。
で、その楽器が返ってってきたら、弦がささくれてるんですよ。
プレーンガット弦でよくみるアレです。

プレーンで弦がささくれるのは、ある種宿命みたいなもので、淡々とささくれを補修してたんですが、
ふと「最近、本番一回でここまでのささくれになったことはないなあ」と気づいたんです。

僕が生まれて始めてプレーンガットを張った時(ピラストロのコルダでした)、
たしか1時間かそこいら弾いたら、ガリガリにささくれてしまったんです。
こんなに簡単にささくれるもんなのか!?と思って、師匠に聞いてみたら、師匠は全然ささくれたりしないと。

で、わかったんです。
ガット弦の寿命は、奏者の左手のテクニックに依存するんだと。

やわらかく、丁寧なフィンガリングができる奏者はガット弦を長く使うことができるけど、
フィンガリングが荒れるとそれが弦のダメージとして現れてきてしまうのだと。


最近は、オケの練習が終わっても、ほとんどささくれることがなくなってたんで、いつのまにか、フィンガリングが落ち着いてきてたんですね。
他人に楽器を貸したことで、自分の成長に気づけたんです。

でも、フィンガリングの技術の向上に何が効いたんだろう?と考えると、
たぶん、アレクサンダー・テクニークと、それを使った、「極めてゆっくりな」練習なんだと思うんですよね。
フレンチ弓を支える親指が痛くなくなったのも、その練習のおかげかなあ。

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# by tajimanomegane | 2017-07-17 01:11 | Trackback | Comments(0)


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