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ヘルムホルツ波の理想と現実

http://www.knutsacoustics.com/videos-sounds.html

コントラバス奏者であった故クヌート・ギュットラーは晩年音響学の研究をしていて、その成果が上のサイトで見られる。

とくに注目したいのは、ヘルムホルツ波と呼ばれる、擦弦楽器特有の運動だ。

弦楽器を弾くと、弓で引っ張られた点を頂点とした三角形の、この頂点が回転するような、ヘルムホルツ波という独特の運動をする。

アルコで弾く限り、振動の状態は、何かしらヘルムホルツ波のような動きをする。
しかし、その一方で、音響学の本に載っているような、完璧なモデルのようなヘルムホルツ波の振動はしない。
たとえば、圧力や粘着力が強すぎると、Stick&Slipをする点が左右どちらかに偏るし、
弱すぎれば、三角形の頂点の形はぼやける。
弦の柔軟性が足りなければ、やはり三角形の頂点がぼやけてくる。
こういう状態だと、音程がわからないような状態になったり、音色が引っ掻くような音になったり、引っかかっていないような音になったりする。

では、どういうのが良い状態なのか。
ギュットラーのモデルを見ていると、
ヘルムホルツ波の形が、シンプルで、歪みのない形になればなるほど、音程感や音色が向上しているように感じられる。
つまり本に載っているような状態、
アニメーション化すれば、以下のサイトにあるような状態
https://plus.maths.org/content/why-violin-so-hard-play
これが、良い状態なのだろうな、と思う。

そう、たとえば、こういう動画を見てみると分かりやすいかもしれない。


この動画だと、開始〜20秒くらいまでは、弦は横に往復振動しているけれど、
30秒を過ぎたくらいから、はっきりとヘルムホルツ波の振動が観察できる。
そして2分30秒くらいのところで、弓を離してからは、撥弦楽器と同じような振動になってくる。

この一連の動きは、ヴァイオリンの弾き始めに、音がかすれて聞こえて、
弾いているとしっかりした音が聞こえてきて、
弾き終わりに弓を話すと、余韻が聞こえる、
というような状態に相当していると考えられるわけだ。

となると、しっかりした音、弦楽器らしい音として聞こえるのは、ヘルムホルツ波のモデルがなるべく本に載っているような理想的な形に近いときで、
そうでない場合には、この形がなんらかの程度、阻害されているのだろうな、と思う。
by tajimanomegane | 2016-05-02 01:40 | コントラバス・ガンバ | Comments(0)
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